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2014年6月26日木曜日

「翻訳家」と「翻訳者」の違い

以前より気になっていた、「翻訳家」と「翻訳者」の違いについてブログに纏めてみました。


大阪にてライターエージェントを経営している北村盛康氏のブログでは、「作家」と「ライター」との違いについて以下の通り述べています。

「作家」・・・書き手の主観の強い文章を執筆する者
「ライター」・・・書き手の主観の弱い文章を執筆する者

「作家」と「ライター」、両者は同じ物書きであるという点では共通しているわけですが、両者を分ける基準となっているのが、北村氏によれば「書き手の主観の有無」であるというのです。
ご存知の通り、「作家」とはジャンルは何であれ、本を執筆する仕事に従事する者のこと、一方ライターとは企業の販促資料やプレスリリース等を作成する仕事に従事する者のことを指します。後者の仕事において求められるのは、「いかに客観的な立場で書けるか?」です。主観的な感情が入ってはなりません。

この「作家‐ライター」という二項対立は、「翻訳家‐翻訳者」でも考えることができます。
この場合、「書き手」を「翻訳をする人」に入れ替えて考えてみます。
すると、「翻訳家」とは翻訳をする人の主観が強く反映された翻訳をする者、例えば、柴田元幸氏や村上春樹氏をはじめとする文芸翻訳者が該当します。一方、「翻訳者」とは決して翻訳者自身の主観が入ることが許されず、あくまでも客観的な立場での翻訳が求められている人を指します。すなわち実務翻訳や産業翻訳、その他専門分野の翻訳に従事している人が後者の「翻訳者」の部類に該当します。

さらに、「翻訳者自身の主観の有無」に加え、「職業的使命を持っているかどうか?」も両者を分ける重要な基準のひとつとなっているもの思われます。私が考えるに、文芸翻訳者をはじめ「翻訳家」と呼ばれる人は趣味の一環として翻訳に従事している一方、「翻訳者」は仕事として取り組んでいるケースが多いように思われます。

ところで、私たちは何となく「翻訳者よりも翻訳家のほうが格が上」というイメージを受けます。
例えば、「翻訳家」と呼ばれる文芸翻訳者の場合、実績が認められれば、将来的には直木賞や芥川賞、ノーベル賞の受賞も想定されます。一方、一般の産業界で活躍する翻訳者の場合、どんなに素晴らしい業績を残したとしても、直木賞や芥川賞に匹敵するものは存在しないため、そのような賞は受賞されません。こうしたことが背景にあり、「翻訳家‐翻訳者」間においてイメージ的な格差が生み出されることがあります。

一般の産業界で活躍する人のなかには出版翻訳でも活躍の場を見出そうと考えている人も少なくありません。そのような転機のきっかけとなっているのが、「社会的に認められたい」という強い気持ちであるのかもしれません。